| 流行(はやり)ものから見えるもの オトコは美肌で勝負する! ―化粧や整形に走る男性たち |
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| かつて『人は見た目が9割』といった趣旨の本が売れたように、体面を気にする男性が増えて久しい。この数年は「会話術」や「歩き方教室」がブームに。しかし、今やそれが美容の世界にも広がってきたようだ。 その主役が「美肌」である。例えば、男性向け皮膚用化粧品の市場が急成長し、中高年管理職のダイエットや、美容整形を試みる男性が急増。皮膚科には、高い費用をかけても手のシミを取りたいと願う営業職や寿司職人が殺到中という。 つまり、「見栄えの美しさ」で仕事の好感度を得ようとの作戦だ。 また、ロシアのプーチン大統領が鍛えあげた上半身をメディアに見せて若さを強調したり、07年8月にはフランスのサルコジ大統領の写真に「脇腹が修整されているのでは?」との疑惑がうわさされたり……。「男は中身で勝負」というのは、もう過去の物語なのだろうか。
さらに、こうしたトレンドを後押ししているのが、昨今の世相である。 例えば江戸時代の絵画などを見ても、初期はもみあげや口ひげを生やした男性が多かったが、中期になると脱毛が一般化し、女装した少年(若衆)や化粧した歌舞伎役者などが錦絵を飾ってきた。江戸研究家の白倉敬彦氏は、「往時も今も戦争がないために、男性はたくましい体よりも女性のようなしなやかな体形や美肌を好む風潮が生まれたのだろう」という。 しかし、別の理由もありそうだ。医師などが指摘するように、人間は夜更かしをすると皮脂が増え、食生活が乱れると吹き出物ができる。そうした現代人の不規則な生活の結果が「美しい肉体へのリフォーム」を求めた、という仮説も成り立つだろう。 とすれば、苦労して「美肌を造る」よりも、夜中の飲み過ぎや食べ過ぎに注意して「肌荒れを防ぐ」方が先決であり、安上がりかもしれない。 NML野村オフィス 代表 野村 正樹 野村 正樹/のむら・まさき 1944年神戸生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。67年サントリー(株)に入社。94年サントリーミュージアム「天保山」を開館し、広報部長に就任。86年には『殺意のバカンス』で推理作家としてデビュー。現在、NML野村オフィス代表として、マーケティング、広告、サラリーマンのライフデザイン、トレンド・世代論、都市論、推理小説などの著作・講演活動に専念。近著は『嫌なことがあったら電車に乗ろう』(日経ビジネス文庫)、『鉄道ダイヤに学ぶタイムマネジメント』(講談社α文庫)など。 |